“シングル”のポロコート
ここ数日は急激に冷え込んできましたね。
もっとゆっくりと変化してくれるといいのですが、、、

さて、今回も先日に続きコートのお話を。
完成品からご覧ください。
お詳しい方なら、今回のコートはちょっとした”違和感”があるかもしれません。


過去スーツを2着オーダーいただき、初めてコートに挑戦いただいたO様。
金融系企業にお勤めで、主にビジネス用途、そして通勤は自転車を使うこともあるということでした。

ポロコートは、19世紀の後半、イギリスのポロの選手が、競技の間の休憩中や待ち時間に着用したウェイトコートが原型といわれていのでするが、実際には別物です。
そもそもポロコートという名前は、1910年、アメリカでブルックスブラザーズが名付けたもの。
発売当初はクリーム色の生地で、貝ボタンがあしらわれていたそうで、その後キャメル(ラクダ毛)で作られるようになり、現代ではポロコートといえばキャメル素材が定番とされています。
当時のアメリカのコートといえば、ゆったりしていて着丈も長かったのですが、、服飾評論家の出石尚三先生によれば、当時のポロコートはショート丈だったそうです。
肉厚のキャメルズヘアーに、広いステッチ幅、フラップ付きのポケットやターンナップカフが分かりやすい特徴ですね。
O様にお選びいただいた生地はネイビーの目の詰まったウール素材、いわゆるウールメルトンです。


メルトンとは、強い縮絨をかけ綾目が全く見えないように仕上げた厚手生地のことで、基本的には糸の太さや目付を除けばフランネルと同じです。
ピーコート等にもよく使われる非常に頑丈なつくりとなっており、メルトンは紡毛織物の代表的な素材でもあります。
自転車通勤にも耐えうる丈夫さに加え、膝上までの短めの着丈に設定したことで、ライフスタイルに馴染み気軽に羽織れるオーバーコートとなりました。
元々ポロコートは短めの着丈だったのですから、ある意味ポロコートらしい着丈だといえます。

「シングルのポロコートって可能でしょうか?」
最初のO様からのお問い合わせです。
なるほど、、、
ポロコートといえば、ダブルブレストのアルスタカラーが大きな特徴のひとつ。

毎年たくさんのお客様にオーダーいただくポロコートですが、デザインそのものをパターン修正したことはありませんでした。
つまり、シングルのポロコートというのは初めてのオーダー。
「ポロコートなのにシングル?」
こう思われた方もおりますでしょうか。
ボットーネのお客様は、遊びの効いた個性的な服よりも、落ち着いたベーシックな服を好む方が多いのですが、時折クラシックの範疇から外れない程度の遊びが効いたオーダーをいただくことがあります。
今回のコートはまさにそれ、「これは面白そう!」ということでお仕立てすることになりました。

まずは生地選び、写真の通り最終的にお選びいただいたのネイビーのウール素材。
初めはブラウンの生地をお選びいただいたのですが、やはり使いやすさ、着回しのことも考慮してネイビーに路線変更。
どちらの生地でも間違いのない仕上がりだったかと思いますが、やはり深みのあるネイビー(ダークネイビー)は都会的で洗練された印象ですね。
カシミアなどの素材もご検討いただきましたが、実用面などを加味するとここはウールが最良であると判断しました。

ステッチは通常のコバよりも広めに5ミリ幅で施し、ポロコートという元々が「スポーティなコート」と位置付けられていることに加え、O様のご使用用途を踏まえ着丈も短めに設計しましたので、ステッチなどのディテールも「スポーティ」をテーマに作り上げました。
ステッチだけでも大きな違いがあるから不思議なものです。
いかがでしょうかこの雰囲気、とても良い表情をしていますよね。

背面は、もちろんアクションプリーツ。
単純に腕の動かしやすさが違います。
コートはやはり厚手の生地で仕立てることが多いですから(近年は薄手のコートもありますが)、どうしても多少の動きの制限があります。
これを大きく緩和してくれるのがアクションプリーツ。
車通勤、自転車通勤、そしてアクティブな営業マンにも実用的でおすすめな仕様です。
全然腕の動かしやすさが違いますよ。

ということで、今回はこだわりのコートをご紹介させていただきました。
コートに拘るだけで冬の装いは格段に魅了的になるのですが、実際はコートに何の拘りもない人が9割。
近頃見かける多くのコートはやはり色が真っ黒でややショート丈、すこし細めのシルエットにベルトが付いたポリエステル/綿あるいはポリエステル100%で作られた何の変哲もないものばかりです。
コートはせっかく男を格上げする特別なアイテムなのに、、、もったいない。
「コートを仕立てる」これだけで圧倒的に少数派、だからこそ意味があるのではないでしょうか?
そしてお気に入りのコートに袖を通せば、寒い日でも毎朝明るい気持ちになれますし、あらゆる場面に対応できるコートがあれば、服装で悩むこともなくなります。
コートは一生物といっても過言ではなく、あなたと共に人生を歩む特別なパートナーとなるのです。
ライター:nakanomaru一度は大手IT企業へと入社。5年勤務ののち、心の声に従い上京しボットーネに。
人生で情熱を注げることは2つ、1つはサッカー、もう1つはスーツ。
何事もコツコツ、地道に基礎を固め着実に行う動作の安心感の高さはクライアントからの評価も高い。
2021年10月19日
ファッションアイテム | オーダーコート
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